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「レーズン(干しぶどう・干し葡萄)」の基礎知識
身近な食材である「レーズン(干しぶどう・干し葡萄)」は、
パンやスイーツの材料として、
また、お酒のおつまみなどとしても人気が高く、老若男女に広く親しまれています。
ここでは、意外と知られていないレーズンの種類や栄養成分などについてご紹介します。
そもそも「レーズン」とは?
「レーズン」とは、ぶどうを皮ごと乾燥させて作るドライフルーツの一種。「干しぶどう・干し葡萄」とも呼ばれ、その名のとおり、種なしぶどうを天日または機械で乾燥させて作ります。
レーズンの発見は、なんと紀元前!木になったまま自然に乾燥したぶどうを誰かが見つけた時、レーズンの歴史が始まったと言われています。紀元前13世紀頃から、現在のスペインやギリシャ、イランの辺りでぶどうが栽培され、レーズンが作られていました。
アメリカ大陸へぶどう栽培の技術が伝来したのはスペインによるメキシコ植民地時代で、スペインの宣教師たちによるぶどう栽培が行われていました。
19世紀のメキシコ独立後、ぶどう栽培の火は消えかかりましたが、宣教師たちの残した知識を利用した栽培業者がサンディエゴ近郊でワイン用ぶどうの栽培を始め、やがてレーズン用のぶどうも作られるようになりました。
しかし、サンディエゴはレーズン作りに最適な土地ではなかったため、北上した栽培業者たちが発見したのが、太陽の恵みとシエラネバダ山脈からの水量が豊かなサンホアキン・バレーのフレズノ近郊でした。現在も、フレズノ近郊はカリフォルニア・レーズンの一大生産地です。
その当時、レーズン用ぶどうの栽培にはマスカットが多く使われていましたが、レーズンを使う時には皮を破って種を取り出さなくてはならず、消費者にはあまり好まれませんでした。
しかし、1876年、スコットランドからの移民だったウィリアム・トンプソンが「レディ・ディカバリー」という名の種なしぶどうを農産物品評会に出品し、“革命”が起きました。やがて「トンプソン・シードレス」(シードレス=種なし)として有名になるこのぶどうこそ、種がなく、皮が薄く、甘くてとても美味しく、大規模生産が可能という、理想的なレーズン用のぶどうだったのです。
ところで、カリフォルニア・レーズンの特長の一つである、独特の茶褐色。
あの色味は、ぶどうに含まれるグルコース(ブドウ糖)とアミノ酸が熱によって結合し、「メイラード反応」(褐変反応)を起こしたもの。ほとんどのレーズンが緑色のぶどうから作られますが、太陽のエネルギーによって言わば “日焼け”し、天然の茶褐色に変化します。
茶褐色のレーズンに人工着色料や添加物は使われておらず、また、甘みも自然そのままの味わい。砂糖は一切使われていません。
レーズンの種類
原料となるぶどうの品種や産地の違いで、レーズンにもいくつか種類があります。
■カリフォルニア・レーズン
日本で最も多く食べられているレーズンで、そのほとんどが緑色で皮の薄い種なしぶどうを天日干しして作られます。最も多く使われているぶどうの品種はトンプソン・シードレスで、他に、フィエスタ、セルマピート、ドゥバインなどがあります。
ちなみに、天日干しする期間は、地面に敷いた防水処理済みの特殊なペーパーの上に手摘みしたぶどうを並べて乾燥する場合は2~3週間、ぶどうの成熟後に枝を切って水分がいかないようにし、そのまま枝ごと乾燥(DOV / Dry On Vine)する場合は6~8週間程度です。
なお、カリフォルニアでは、赤色のぶどうを使った大粒のフレームシードレス(“枝付きレーズン”として食されることが多い)や、黒褐色で小粒の酸味が強いブラック・コリンスというぶどうから作られる「カレンツ(カランツ、カレンズ)といった種類のレーズンも作られています。カレンツは、ぶどうの甘さだけでなく酸味も味わえる独特の風味を活かして、パンやケーキ、お菓子の材料として人気です。
■サルタナレーズン
トンプソン・シードレスを短時間で天日干ししたもの(主な生産国:トルコ)
■マスカットレーズン
種なしのマスカットを天日干ししたもの(主な生産国:オーストラリア)
■グリーンレーズン
種なしのマスカットを日陰干ししたもの(主な生産国:中国)
レーズンに含まれる栄養素は?
ぶどう1kgから作られるレーズンは、およそ200g。干し椎茸や切り干し大根の栄養価が生の状態より高くなるのと同様、皮ごと天日干しするレーズンも、ぶどうの栄養素が小さな1粒に凝縮されています。レーズンには、どのような栄養素がどれだけ含まれているのでしょうか?
■鉄
人体に必要なミネラルの一種で、赤血球のヘモグロビンに多く存在する。不足すると貧血を起こす。(*1)
レーズンには、可食部100gあたり2.3mgの鉄が含まれています。これは、生の皮つきぶどうの11.5倍、乾燥プルーンの約2.1倍にあたります。(*2)
■カリウム
人体に必要なミネラルの一種で、浸透圧の調整などの働きをする。ナトリウムを排出する作用があるため、塩分の摂り過ぎを調節する上で重要。(*3)
レーズンには、可食部100gあたり740mgのカリウムが含まれています。これは、生の皮つきぶどうの約3.4倍、生バナナの約2.1倍にあたります。(*4)
■食物繊維
食べ物の中に含まれ、人の消化酵素で消化することのできない物質。整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目され、第6の栄養素といわれることもある。(*5)
レーズンには、可食部100gあたり4.1gの食物繊維が含まれています。これは、生の皮つきぶどうの約4.6倍、生の皮つきりんご皮つきの約2.2倍にあたります。(*6)
■抗酸化物質
活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりする物質のこと。ポリフェノール、カロテノイドなどの種類がある。(*7)
レーズンには、一食相当量(43g)あたり458mgのポリフェノールが含まれています。これは、生のぶどうの約7.3倍、なつめやし(デーツ)の約1.6倍にあたります。(*8)
■マグネシウム
人体に必要なミネラルの一種で、リンやカルシウムとともに骨を形成するほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つ。(*9)
レーズンには、可食部100gあたり31gのマグネシウムが含まれています。これは、生の皮つきぶどうの約4.4倍、生グレープフルーツの約3.4倍にあたります。(*10)
レーズン(可食部100g当たり)
エネルギー | 324kcal |
水分 | 14.5g |
たんぱく質 | 2.7g |
脂質 | 0.2g |
炭水化物 | 80.3g |
灰分 | 1.9g |
食物繊維総量 | 4.1g |
コレステロール | 0mg |
食塩相当量 | 0g |
廃棄率 | 0% |
ポリフェノール | 0.4g |
無機質 | |
---|---|
ナトリウム | 12mg |
カリウム | 740mg |
カルシウム | 65mg |
マグネシウム | 31mg |
リン | 90mg |
鉄 | 2.3mg |
亜鉛 | 0.3mg |
銅 | 0.39mg |
マンガン | 0.2mg |
ビタミン | ||
---|---|---|
A | レチノール | 0μg |
カロテン | 11μg | |
レチノール等量 | 1μg | |
ビタミンD | 0μg | |
E | α-トコフェロール | 0.5mg |
γ-トコフェロール | 0.3mg | |
ビタミンK | 0μg | |
ビタミンB1 | 0.12mg | |
ビタミンB2 | 0.03mg | |
ナイアシン | 0.6mg | |
ビタミンB6 | 0.23mg | |
ビタミンB12 | 0μg | |
葉酸 | 9μg | |
パントテン酸 | 0.17mg | |
ビタミンC | Tr |
【参照・出典】
*1, *3, *5, *7, *9:厚生労働省e-ヘルスネット
*2, *4, *6, *10:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
*8:“Lipophilic and Hydrophilic Antioxidant Capacities of Common Foods in the United States”
Xianli Wu, Gary R. Beecher, Joanne M. Holden, et al.
J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 12, 4026–4037
レーズンを健康維持に活用しよう
■鉄で貧血予防
ヘモグロビンという言葉は、「ヘム=鉄」、「グロビン=たんぱく質」という意味で、赤血球の主要な構成物質であり、肺から全身へ酸素を運び、体内で発生した二酸化炭素を排出する役割を担っています。このヘモグロビンが不足すると体内が酸欠状態になり、貧血となってしまうわけです。
古くなった赤血球がひ臓で処理されるとき、ヘモグロビンはヘムとグロビンに分けられ、ヘムに含まれている鉄は体内でリサイクルされます。そのため、一度体内に入った鉄は、日常生活ではごくわずかしか排泄されません。それでも貧血状態になる場合、以下のような理由が考えられます。
- ① 特に女性は、月経や妊娠・出産、授乳によって大量に鉄が使われるため、摂取しても必要量に追いつかない。
- ② うまくたんぱく質と結合しない、または何らかの理由で体内でのリサイクルがうまくできておらず、鉄を摂っても血にならない。
- ③ 体内のどこかで出血している。特に男性で貧血と診断された場合、胃腸で出血している可能性が高いので要注意。
貧血は若い人や女性に多い症状と思われがちですが、実は、中高年層や男性も気を付けなくてはなりません。意外と知られていませんが、鉄は汗と一緒に排出されてしまうのです。そのため、スポーツをする場合や真夏の発汗が多い時期などにも、鉄を摂るようにしましょう。
レーズンは粒が小さく食べる量を調整しやすいので、普段の食事にプラスしておやつとして食べたり、ウォーキングやランニング時のミネラル補給として携行したりするのもおすすめです。
■カリウムで減塩
カリウムはナトリウムと細胞の内外で連動し、血圧や細胞の浸透圧を調整しています。ポンプのように、細胞内と細胞外にあるナトリウムとカリウムが行き来して
細胞内の水分中の濃度を一定に保つ働きをし、臓器や筋肉、脳の働きを正常に保つことができます。そのため、体内でカリウムが不足すると、筋肉の動きに影響
が出てけいれんや足がつり、精神的に不安定になったり食欲不振が起きたりすることがあります。
体内に取り込まれたカリウムはナトリウムとともに体外へ排泄されるため、普段の食事でナトリウム(塩分)を摂りすぎたら、カリウムを摂取することが大事。
実は、醤油や味噌との相性もいいレーズン。砂糖の代わりとして、レーズンを軽く刻んで煮物などの料理に使えば、味わいにコクが出る上に、減塩効果も期待で
きます。
■食物繊維で腸活
かつて食物繊維は、“消化されずに必要な栄養素まで出してしまう”食べ物のカスだと思われてきましたが、現在では、腸内環境を良好に保つための働きや血糖
値の上昇抑制、コレステロールなどの余分な脂質を排出するといった、様々な重要な働きがあることがわかってきました。
「腸内フローラ」と呼ばれる、花畑のように生息しているたくさんの腸内細菌は、「善玉菌」、「悪玉菌」、そしてどちらか優勢な方に傾く「日和見菌」と大きく3種類
に分類できます。「腸内環境を整えて良好に保つ=腸活」のためには、食物繊維が含まれた食材を摂り、善玉菌を増やすことが大切です。
カリフォルニア・レーズンには、ぶどうが乾燥する過程で形成され、腸内でフラクトオリゴ糖に変化し腸内細菌の餌になる水溶性食物繊維の一種であるフルクタン
(イヌリン)が、100g中5.7g含まれています。フルクタンは、血糖値の上昇抑制やコレステロールなどの余分な脂質の排出の効果も期待できます。
朝食時などにヨーグルトを食べるという方も多いと思いますが、そこにレーズンをプラスすれば、より良い腸活ができるでしょう。
一日にどれくらいの量を食べればいい?
様々な栄養素を含む一方、それなりにカロリーもあるレーズン。食べる量は、食事とのバランスを考えながら調整すると良いでしょう。一つの目安として、30gのレーズンは50~60粒程度、約97kcalです。
ちなみに、レーズンの糖質はブドウ糖と果糖によるもので、砂糖は使われていません。特にブドウ糖は、脳にとって最も速効性があり重要なエネルギー源で、身体を動かすのにも欠かせない成分です。頭や体の疲れを感じたとき、一つまみのレーズンを食べて、一息ついてみてはいかがでしょうか。