■2023年06月20日■
「第31回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」
2部門の大賞は敷島製パン(株)の長谷川美里氏と
Kamo bakeryの傍島加織氏に決定!
カリフォルニア・レーズン協会は、2023年6月9日(金)、10日(土)の両日、「第31回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」の最終審査を日本パン技術研究所(東京都 江戸川区)で実施し、大賞2名を含む合計11名の受賞者を決定、表彰しました。
本コンテストは、カリフォルニア・レーズンを使った新製品の開発とその商品化を目的に実施、31回目の本年は、「量販製品部門」(工場生産し、完全包装で販売する作品とベイクオフ・QBD製法で生産し販売するパン)と「オールスクラッチ製品部門」(店舗や工場でのオールスクラッチ製法で生産し販売するパン)、そして、今回新設された「育成機関部門」(オールスクラッチ製法の作品)の計3部門で作品を募集した結果、日本全国から計152作品の応募がありました。
第一次書類審査で選出された、量販製品部門とオールスクラッチ製品部門のファイナリスト計21名が最終審査に臨み、2日間に渡る計7時間以内に作品を製作し、作品の製作意図や特長などについてのプレゼンテーションを行いました。その後、質疑応答と試食審査が行われました。審査は製パン技術関係者6名のほか、カリフォルニア・レーズン協会駐日代表のジェフリー・マクニールが審査員長を務めました。なお、育成機関部門は、作品制作およびプレゼンテーションによる審査は行わず、レシピと作品提出による実物試食審査のみを行いました。
審査の結果、カリフォルニア・レーズン大賞は、量販製品部門では敷島製パン(株) 長谷川美里氏の『フロマージュレーズンショコラ』が、オールスクラッチ製品部門ではKamo bakery 傍島加織氏の『色彩レーズン ~バニラの香りと共に~』が受賞しました。また、育成機関部門では、専修学校日本菓子専門学校 久住清剛氏の『ベルクルーブ レザン』が優秀賞を受賞しました。全11名の受賞者には楯が授与され、副賞として、量販製品部門とオールスクラッチ製品部門の10名にはカリフォルニア・レーズンの故郷「カリフォルニア州フレズノへの研修旅行」、育成機関部門の1名には賞金15万円(ギフト券)が贈られました。
量販製品部門とオールスクラッチ製品部門の受賞作品は、これから続々と発売開始される予定です。カリフォルニア・レーズン協会は、今後もカリフォルニア・レーズンの使い方や新製品開発のアイデアを提供してまいります。
入賞者全員と審査員
● カリフォルニア・レーズン協会 駐日代表 ジェフリー・マクニールの挨拶 要約
カリフォルニア・レーズン協会を代表し、本日、「カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発 コンテスト」へ21名の優秀なファイナリストの皆様をお迎えすることができ、大変嬉しく思っております。また、審査員の皆様には、貴重な専門知識を応募作品への評価に活かしてくださり、厚く御礼申し上げます。
本年で、カリフォルニア・レーズンのコンテストを開始してから31年目となります。この間、5000件を超えるレシピの応募がありました。当コンテストの受賞者の中には、クープ・デュ・モンドやイバカップといった、世界的に一流のベーカリーコンテストに日本代表として参加されている方もおり、大変嬉しく思います。本日この場にいらっしゃる方々も、今後そういったチャンスを得られることを願っております。
今年の最終選考に残った作品は、実に優れたものばかりで、日本全国から参加されたファイナリストの皆様の独創性と高い技術が反映されていると感じました。審査員の一人として、ファイナリストの皆様にはご自身の才能をぜひ誇りに思っていただきたいと、心より申し上げます。
優れた技術と素晴らしい作品を披露したファイナリストの皆様に、重ねてお祝いを申し上げます。全ての作品を試食審査することができ、光栄に存じます。皆様が、今後ますます技術を磨かれていきますことを期待しております。
● 伊藤 常至 氏による最終審査総評 要約
本コンテストで難しいと感じることは、コンテストでありながら、最終的には皆さんの職場で製品としてお客様に売らなくてはならないということがあります。販売してお客様にカリフォルニア・レーズンの美味しさをより知ってもらうために、皆様の作品には、手に取ってもらう工夫がたくさん表れておりました。和の素材を使ったものや地元の食材を使ったもの、アレルギー対策やSDGsを意識したものなど、時代を反映し、趣向を凝らした作品を多く見ることができました。技術はもちろんですが、作業性やロスなく製品化する工程、そして作品のアピールポイントと味わいの整合性が取れているかどうかが、審査のポイントとなったように思います。
今後、このコンテストが10年20年と続くためにも、我々パンに関わる人間一人一人が、少しずつ努力を重ねて業界を発展させていくことが必要だと感じております。これから、皆さんのような前向きな方々が引っ張って、よりレベルの高いコンテストにしていくということが必要かと思っております。
少し審査のこととは外れてしまいましたが、本日はたくさんの素晴らしいものを見させていただきました。ありがとうございました。
入賞作品
(※所属企業・団体名の敬称略)
【量販製品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
長谷川 美里 氏(敷島製パン株式会社)
作品名:フロマージュレーズンショコラ
レーズンにチーズクリームとビターなチョコを合わせて、甘味、苦味、酸味の三位一体をバランスよく仕上げました。後味にチョコの余韻とレーズンの甘酸っぱさが楽しめるデザートのようなデニッシュです。
生地にチップ状マーガリンを練り込み、さらに油脂を折り込みさっくりした食感を出しました。また、発酵風味液を加え旨味を付与し、3日目も美味しく食べられるようにしました。白と黒のコントラストを出すことでレーズンの存在感を引き立たせました。ひと息つく時に食べてもらいたいです。素敵な時間になりますように…。願いを込めて作りました。
【受賞者のコメント】
作品に特長をつけるため、カリフォルニア・レーズンの甘酸っぱさをより活かすことを考えたとき、チーズと相性がいいと思いました。ただ、チーズだけではレーズンの魅力を引き出せないと考え、ビターなチョコレートと合わせることで甘味と酸味と苦味の三位一体が合うと思い、自分自身で美味しいと感じたので、その組み合わせに決めました。
◆ カリフォルニア・レーズン金賞
太田 雅人 氏(タワーベーカリー株式会社)
作品名:オレンジ香るショコラレザン
チョコ×レーズン×オレンジの王道の組み合わせで、誰もが手に取りやすい商品を目指しました。
捏ね上げ直前にチップマーガリンを混ぜ込んだ生地に、チョコのフラワーペーストシートとレーズンを折り込むという「練りパイ」と「菓子パン」のハイブリッド設計にすることで、クラストは “さっくり” クラムは “しっとり” の食感を実現しました。主役のレーズンは、オレンジピールとグランマニエに漬け込んで、甘さの中に爽やかな柑橘の香りをプラスしました。
ライン生産でも可能な成型でありつつ、折り込み層を見せる仕立てにすることで、袋売りパンではなかなか見かけない、リテール商品のようなゴツゴツとした見た目にもこだわりました。
◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
中山 珠洲 氏(敷島製パン株式会社)
カリフォルニア・レーズンと北海道の美味しい食材を組み合わせたい、という想いから考案したパンです。北海道は日本の食料生産において重要な役割を担う、自然豊かで素晴らしい土地です。職場が北海道に異動になってから、北海道の美味しいものを改めて発見し、同時に、食に関する様々な問題についても身近に感じるようになりました。日本の小麦の自給率は低く、国内で使用するほとんどを輸入に頼っています。また近年、様々な需要の変化から牛乳の廃棄が問題となっています。そのような課題の解決に少しでも貢献したいと考え、今回は北海道産の小麦粉と牛乳を使用することにしました。
なるべくたくさんの牛乳を使うために、仕込みに使う水を牛乳に置き換え、さらに牛乳に一晩漬け込んだレーズンを使用しました。牛乳の優しい甘さとみずみずしいレーズンには相性がよく、くるみの食感もアクセントとなって、どんな世代の方にも親しんでいただけるパンになっています。また、生地に牛乳を使用していることが見た目からは分かりづらいので、チョコレート生地を用いてパンに牛の柄を表現しました。見た目にもかわいらしく、手に取ってもらいやすいサイズ感となっています。
【オールスクラッチ製品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
傍島 加織 氏(Kamo bakery)
彩り豊かにレーズンのパンを楽しんでもらえる色彩レーズン。
主役であるレーズンを引き立てられるようなバランスで配合しました。カリフォルニア・レーズンをラム酒とバニラペーストに漬け込み、レーズンのジューシーさと甘さを閉じ込めました。
歯切れの良い食感のパンにピスタチオを練り込み、圧倒的なレーズンの存在感を楽しんでもらいたく、レーズンの存在がより引き立つよう酸味のあるパイナップルとアプリコットを合わせ、ふわっと香るバニラでバランスを取りました。お客様に、“どんな味がするのだろう”とワクワクしてもらえるような、目でも楽しい、食べても美味しい、レーズンのおいしさを伝えられるようなパンを考案しました。子供から大人まで、たくさんの人に愛されますように。
【受賞者のコメント】
今回の作品は、商品化することを大前提に考えました。Kamo bakeryのオーナーは、お客様に喜んでもらえるパンを作ることを大事にしているので、本作品は、お客様にいただいた声から生まれたパンです。食べておいしいということが一番大事だと思ったので、そのことを意識し、いい意味で手の込んでないパンを作りました。
◆ カリフォルニア・レーズン金賞
宮﨑 義仁 氏(スカイプロバンス ベーカリー&カフェ)
作品名:ラムレーズン&バターのブリオッシュフーガス ~プレッツェルザルツとチェダーを添えて~
2019年プレゼン時に審査員の方々よりいただいたコメントを参考に改善した作品です。
課題は老若男女食べやすく歯切れ良さを目指すことでした。修行先ニースの名物フーガスは本来ハード系生地で作るところを、柔らかいブリオッシュに変更して対策をとりました。
今回の作品コンセプトは「ラムレーズン&バター」。カリフォルニア・レーズンの濃厚な甘み、ダークラムの大人の香り、バターの豊潤なコクをブリオッシュフーガスに閉じ込めました。フィリングにも練り込まれたバターがブリオッシュ生地を揚げ焼きにすることでさっくりとした軽い食感を実現。バターが焼減する分、クリームチーズのまろやかさが残るよう設計。プレツェルザルツとチェダーの塩気が後を引くレーズン溢れるフーガスです。
永田 輝 氏(MOROPAIN)
レーズンのフルーティーな甘みとスパイスのエキゾチックな香りが口いっぱいに広がり、また食べたくなるなんだか忘れられない宝箱のようなヴィエノワズリー。バターとスパイスの香り良いしっとりとしたブリオッシュにラム酒につけたレーズンと、りんごジュースを加えたレーズンペーストとレモンを包み、異なるレーズンの味わいを楽しんでもらいながら、どこを食べてもレーズンを感じ、少し酸味のあるレモンがアクセントになるよう仕上げました。上面にはオーストリアの伝統菓子であるリンツァートルテをイメージしてサクッとした食感とスパイスを効かせています。
レーズンのフルーティーな美味しさとスパイスのエキゾチックな香りの融合。サクッふわっしっとりの食感の三重奏。カリフォルニア・レーズンの美味しさをつめ込んだ宝箱をあけたような感動をぜひ味わってください。
◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
早川 さくら 氏(ヒルトン東京)
イスパハンをイメージした、フランボワーズとライチ、ローズの風味に加えて、同じバラ科であるアーモンドを入れて食感に変化を出しました。幅広い層の方に食べていただきたいという思いから、アルコールを使わず、子供から妊婦さんまで安心して食べられるようにしました。その代わり、スモークしたカランツを使うことで、甘さをひきしめ、パンチを出してあります。中に入れたジューシーなレーズンとの対比も楽しめると思います。
レーズンの水分保持のおかげでしっとりと、また、ヨーグルト種を使うことで、ほんのりとした酸味と発酵菓子のような仕上がりを目指しました。ホテルで販売することを考え、上品な見た目、かつ、スライスした時の内層も楽しめるような成形にしてあります。
小林 優太 氏(株式会社ドンク)
作品名:抹茶ショコラレザン
カリフォルニア・レーズンの甘みとジューシーな食感をいかしたいと考え、抹茶とココア、チョコチップを組み合わせました。抹茶やココアのビターな味わいがレーズンの甘みを引き立て、折り込みの抹茶生地を巻くことで食感と外観のコントラストを出しています。
くちどけの良いパン、レーズンのジューシーな食感、抹茶の折り込み生地、ココアのクランブル、1つのパンで4種類の食感と味わいを楽しむことができる飽きのこないバランスのとれた作品に仕上がっています。
伊藤 博文 氏(有限会社六曜舎 コーナーポケット)
長く愛される商品になるためには、お客様はもちろん、従業員にも愛されたいと考えました。現場では仕込み本数が増えると労働負担が増え敬遠されます。なので、当社でやっているフランスパン生地をアレンジして効率良く店頭に出せるように作品を考えました。
レーズンの漬け込みには赤ワインとシナモンを合わせ、ドイツのクリスマス市でよく飲まれるホットワインをイメージしました。また、粉寒天も入れているのでレーズンが水分をしっかりと吸い、焼成中にじんわり生地に染み出て、もともと高加水の生地ですが、想像以上にジューシーでしっとりもっちり食べられます。レーズン、赤ワイン、赤ワインのパミスを使用し、ぶどうの恵みを丸ごと味わえる商品に仕上げました。
鈴木 拓也 氏(ホテルグランヴィア京都)
数種類のスパイスと蜂蜜、レモングラス、紅茶で炊き込んだ芳醇なレーズンをブリオッシュ生地と混ぜ合わせ、爽やかなレモンカードと白餡、クリームチーズを合わせたフィリングで包み込み、その上にはサクサクっとしたフィユタージュをS字に成形することで、優雅でかわいらしさを表現させました。S字ラインの赤色にはビーツパウダー生地を使用することで、カリフォルニアの広大なレーズン畑を表現しています。
一口食べるとサクサク食感の後レモンの爽やかさが漂い、スパイス香る芳醇なレーズンの甘み、香りが口いっぱいに広がります。朝食、ティータイムまたはお土産にぴったりな作品に仕上げました。
【育成機関部門】
◆ 優秀賞
久住 清剛 氏(専修学校 日本菓子専門学校)
作品名:ベルクルーブ レザン
フランス語で「曲線美」を表す「ベルクルーブ」をクープで表現しました。
対粉100%以上のレーズンを使用し、また、レーズンペーストを巻き込むことで濃厚にしました。アクセントに、ピーカンナッツ、アーモンドを使用し、香ばしく仕上げました。