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- 第33回 ベーカリー新製品開発コンテスト
■2025年06月25日■
「第32回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」
2部門の大賞はフジパン㈱の髙藤いりえ氏と
㈱志津屋の波多野大樹氏に決定!
カリフォルニア・レーズン協会は、2025年6月20日(金)、21日(土)の両日、「第33回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」の最終審査を日本パン技術研究所(東京都江戸川区)で実施し、大賞2名を含む合計12名の受賞者を決定、表彰しました。
本コンテストは、カリフォルニア・レーズンを使った新製品の開発とその商品化を目的に実施、33回目の本年は、「ホールセール商品部門」(生産工場でライン生産し、食品スーパー、コンビニエンスストア、ショッピングセンター、フランチャイズチェーン等の店舗に卸し販売する商品。ベイクオフ・QBD商品も含む)と「リテイル商品部門」(オールスクラッチ製法で店舗や生産工場で製造し店舗で販売する商品)、そしてそして、「製パン関連企業部門」(ホールセールやリテイルベーカリー等への提案を想定した商品)の計3部門で作品を募集した結果、日本全国から計185作品の応募がありました。
第一次書類審査で選出された、ホールセール商品部門とリテイル商品部門のファイナリスト計20名が最終審査に臨み、2日間に渡る計7時間以内に作品を製作し、作品の製作意図や特長などについてのプレゼンテーションを行いました。その後、質疑応答と試食審査が行われました。なお、製パン関連企業部門は、作品持ち込みによる試食およびプレゼンテーションでの審査を行いました。審査は製パン技術関係者6名のほか、カリフォルニア・レーズン協会駐日代表のジェフリー・マクニールが審査員長を務めました。また、今回は、レーズンパンが大好きで当協会と親交のある、武蔵川部屋の武蔵川光偉師匠(元横綱 武蔵丸)が特別審査員として参加してくださいました。
審査の結果、カリフォルニア・レーズン大賞は、ホールセール商品部門ではフジパン㈱ 髙藤いりえ氏の『そのコクに惹き込まれる ナッティ・レザン・ブッシュ』が、リテイル商品部門では㈱志津屋 波多野大樹氏の『Gold Rush Raisin』(ゴールドラッシュレーズン)が受賞しました。製パン関連企業部門では、東京製菓学校 早川知恵氏の『ジンジャー香る黒みつレーズン』が優秀賞を受賞しました。なお、『シャルマン・ルージュ・レザン』でカリフォルニア・レーズン特別賞を受賞した㈱ジェイアール西日本ホテル開発 松木崇至氏は、当コンテスト史上2人目となる、3度目の受賞を果たしました。
全12名の受賞者には楯が授与され、副賞として、ホールセール商品部門とリテイル商品部門の11名にはカリフォルニア・レーズンの故郷「カリフォルニア州フレズノへの研修旅行」、製パン関連企業部門の1名には賞金15万円(ギフト券)が贈られました。
ホールセール商品部門とリテイル商品部門の受賞作品は、これから続々と発売開始される予定です。カリフォルニア・レーズン協会は、今後もカリフォルニア・レーズンの使い方や新製品開発のアイデアを提供してまいります。
入賞者全員と審査員
● カリフォルニア・レーズン協会 駐日代表 ジェフリー・マクニールの挨拶 要約
カリフォルニア・レーズン協会を代表し、本日、「カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発 コンテスト」へ23名の優秀なファイナリストの皆様をお迎えすることができ、大変嬉しく思っております。また、審査員の皆様には、貴重な専門知識を応募作品への評価に活かしてくださり、厚く御礼申し上げます。そして、今回ご参加くださった武蔵川親方に、特に感謝しております。
本年で、カリフォルニア・レーズンのコンテストを開始してから33年目となります。この間、5000件を超えるレシピの応募がありました。当コンテストの受賞者の中には、クープ・デュ・モンドやイバカップといった、世界的に一流のベーカリーコンテストに日本代表として参加されている方もおり、大変嬉しく思います。本日この場にいらっしゃる方々も、今後そういったチャンスを得られることを願っております。
今年の最終選考に残った作品は、実に優れたものばかりで、日本全国から参加されたファイナリストの皆様の独創性と高い技術が反映されていると感じました。審査員の一人として、ファイナリストの皆様にはご自身の才能をぜひ誇りに思っていただきたいと、心より申し上げます。
優れた技術と素晴らしい作品を披露したファイナリストの皆様に、重ねてお祝いを申し上げます。 全ての作品を試食審査することができ、光栄に存じます。皆様が、今後ますます技術を磨かれていきますことを期待しております。
● 川瀬 幸司 氏による最終審査総評 要約
二次審査ということで技術の方を見させていただきましたが、皆さんの技術や知識など、今年は甲乙つけがたいと、審査員の方々ともお話をしていました。審査員である我々が驚くほど、これから使えそうだというような新しい技術や知識がたくさん出てきていたので、カリフォルニア・レーズンを通じて、これからのパン業界の明るい未来につながっていくように思います。
なお、一点ご注意いただきたいのが、今年の応募レシピは非常に抜けが多く、直しが入っていなかったり意図が不明瞭だったりというところが減点にもつながりますので、今後また応募される際には、細かく書いていただきたいと思います。
以上を持ちまして、私からの総評といたします。
受賞作品
(※所属企業・団体名の敬称略)
【量販製品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
髙藤 いりえ 氏(フジパン株式会社)
作品名:そのコクに惹き込まれる ナッティ・レザン・ブッシュ
レーズンの甘味・コク味に着目して、香ばしい素材(きなこ・アーモンド・メープル)を合わせました。
レーズンは三温糖、アーモンドリキュール、ミルクリキュールに漬け、コク・甘味を引き出せるように。三温糖は主張が濃くなりすぎないよう量を調整しました。
レーズンと乳系の相性は良く、乳のようなコク味をもつアーモンドはレーズンと全体の味わいを馴染ませてくれます。
商品の仕立てはサクッとビスケット生地とじゅわっとデニッシュを合わせ、シュガーマーガリンとザクザクシュガーによるじゅわっと感でレーズンのジューシーさを残せるよう設計しました。
見た目は、メープルの木から連想して、切り株の ように、そこにメープルが染み込んでいるような イメージで作りました。
コク香る大人なナッティーレーズンです。

◆ カリフォルニア・レーズン金賞
勝山 志穂 氏(株式会社神戸屋)
作品名:レザン ヴェール
ほっと一息するティータイムに、見た目からも食べてみても癒しをお届けできるような、とっておきのスイーツパンを作りました。
ブームから定番味種へと上り詰めたピスタチオをレーズンと組み合わせ、ピスタチオの香ばしくまろやかな味わいと鮮やかな色合い、華やかに瑞々しく仕上げたレーズンの味わいと食感が調和する一品です。
商品としては、2色のマーブル生地に、練乳とコアントローに漬け込んだレーズンとピスタチオクリームを合わせ、さらに軽い口当たりで風味豊かなピスタチオのディプロマットクリームをサンドしました。ピスタチオの濃厚な香りや、隠し味に忍ばせたケーキ生地のコクの中で、甘さがありつつ爽やかな香りが鼻を抜けるレーズンが存在感を発揮します。仕上げは、断面の鮮やかな色味と綺麗なマーブル模様を見せ、商品の美しさと引き付けられる香りでお客様を魅了します。
また、目を惹くピスタチオの緑色と、隠し味を忍ばせて全体的な味の立体感を出しているという商品特長から、フランス語で緑色を意味する”vert (ヴェール)”と覆い隠すものを意味する”voile (ヴェール)”を掛け合わせた商品名にしております。

◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
岩崎 純 氏(株式会社神戸屋)
作品名:レーズンと抹茶のブリオッシュフィユテ
抹茶風味のブリオッシュ生地にバターを折り込み、練乳とバニラで風味付けしたレーズンと抹茶のバタークリームを巻き込みました。しっとりと歯切れある生地にレーズンと抹茶の風味が感じられる食パンタイプの商品です。
レーズンは練乳とバニラに漬けることで抹茶との味のバランスを取り、食パンタイプでもしっとりやわらかく、酸味をより感じられるように仕上げています。
生地は折り込みのブリオッシュ生地で石臼挽きの小麦粉を使用し、小麦の香りとブリオッシュの風味がレーズンと抹茶の相性を良くしています。中にはアーモンドクリームとカスタードクリーム、抹茶、レモンを合わせたクリームを使用し、スイーツとしての高級感も出しています。
インバウンド効果で年間通して抹茶商品は売れており、特にクリスマスのある12月は「マッチャクリスマス」というイベントがあるほど抹茶の需要は高くなっています。12月から1月のクリスマス、お土産需要に合わせ、色鮮やかな食パンタイプで販売。1本、2~3枚スライスしたもので用意し、30代以上の世代にご褒美スイーツとして食べていただきたいです。

◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
川田 瞬 氏(敷島製パン株式会社)
作品名:クロワッサン・オ・レザン
カリフォルニアレーズンの甘酸っぱさをぎゅっと詰め込んでジューシーな味わいに仕上げたく、レーズンカットとペーストを使用しました。
クロワッサンの間に入れることで一口食べた瞬間からレーズンの味が感じられ、ほんのりバニラが鼻を抜けていくように仕立てました。パールシュガーが見た目と食感のアクセントとなってレーズンの味を引き立てています。

【リテイル商品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
波多野 大樹 氏(株式会社志津屋)
作品名:Gold Rush Raisin
美味しく健康に長く愛されるパンをコンセプトに作りました。
カリフォルニア・レーズンをトマトジュースに漬け込むことで、まるでもぎたての葡萄のようなフルーティーな甘みとみずみずしい果肉に仕上がり、トマトの酸味と甘みがカリフォルニア・レーズンのうま味を引き立て、レーズンが苦手な方にも食べやすく、また食物繊維豊富で栄養価の高いカリフォルニア・レーズンとトマトにはGABAやリコピンなど、表面にもシードミックス、かぼちゃの種と健康面においても自信をもってお客様に提案できるパンに仕上げました。
具材にはトマトのうま味たっぷりしみ込んだ甘いレーズンをさらに引き立ててくれる塩味のあるオリーヴとチーズを一緒に練り込み、皮生地で包んで焼きあげることで中はモチッと外はカリッとの食感のギャップも作り、食べ飽きることのない長く愛されるようになればと考えました。
カットしたときの内層のレーズンがキラキラしていて金塊のように見えたので、ゴールドラッシュと名前をつけました。

◆ カリフォルニア・レーズン金賞
伊藤 博文 氏(有限会社六曜舎)
作品名:Galette raisin
テーマは信玄餅。昔から全国各地で食べられているきな粉と黒蜜ともちの組み合わせに、カリフォルニア・レーズンを合わせました。日本人はもちろん、外国の方にも食べていただきたい作品です。
配合は発酵パイ生地をベースに、自社で力を入れている有機栽培の自社製品、石臼挽き全粒粉をローストし、たんぱく質を抑制して薄力粉の代わりに使用しています。また、一般的なガレッド・デ・ロワで使用する酢の代わりにルヴァンリキッドを使用し、乳酸菌の付与と伸展性を上げています。
全粒粉ときな粉の香ばしさ、黒蜜のコク深い甘さの中にしっとりとした甘酸っぱいレーズンをザクザクのガレットに閉じ込めました。
焼いた当日はザクザク食感、翌日は中に入れた求肥のもちもち感、追いきな粉をふりかけても美味しく食べられます。

岡本 瞬 氏(株式会社パレスホテル)
作品名:カリフォルニア・レーズンと国産小麦の二重奏(デュオ)
「長く愛されるレーズンパン」をテーマに考案しました。カリフォルニア・レーズンの旨味を最大限に引き出し、シンプルで、様々なシーンで楽しんでいただけるパンです。
2種の国産小麦を、オートリーズ後、本捏ね後と、一晩ずつ冷蔵で熟成させ、国産小麦本来のポテンシャルを引き出しています。本捏ねの際、自家製レーズン液種のフルーティーな香りとカリフォルニア・レーズンのしっかりとした味わいを出すため、自家製レーズンペーストをふんだんに練り込み、しっとりモチモチの食感の生地に仕上げました。具材となるレーズンは、一回り以上大きくなるまで柔らかく蒸しあげ、一粒一粒が瑞々しく存在感を感じられます。軽くラム酒でマリネすることで、程よい風味がカリフォルニア・レーズンの味を引き立てます。前処理したカリフォルニア・レーズンのジューシー感を保持するため、パンチの際に生地と合わせました。
カリフォルニア・レーズンの保湿力でパリッと香ばしいクラストと、しっとりモチモチのクラムは歯切れと口どけの良さが特長です。噛む度にカリフォルニア・レーズンの果汁感と生地の旨味を感じる、毎日食べても飽きのこないパンに仕上げました。

◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
相田 綾 氏(pain maison RIRE)
作品名:American habit ~レーズンとその仲間たち~
「もっと多くの方々にカリフォルニア・レーズンのおいしさを届けたい」そのような想いから製品作りがスタートしました。
製品名にあるように、アメリカ産の材料(オーツ麦、サンフラワーシード、アーモンド、クランベリー、レーズン)を豊富に使い、多くの方々に食べていただけるように、特定原材料8品目は小麦のみになる製品を考えました。それにより、カリフォルニア・レーズンの持つ天然由来の甘みも引き立ち、さらに吸水性を活かし、ぶどうジュースに浸すことでジューシーさも感じやすくなったと思います。今回、レーズンペーストも使用していますが、レーズンの抱水性を期待して中種に添加しました。
昨今のパン業界では冷凍パンの通販も流行しており、そのままではもちろん、冷凍解凍した場合でもおいしさが持続するという点も、今後の製品作りのポイントとなってくるように感じています。レーズンペーストを15%中種に添加することで、水和を促し、生地全体にレーズンの風味が増したのと、保水性が増し、おいしさの持続に一役買っていると思います。

荒井 真由美 氏(有限会社ベーカリーハイジ)
作品名:Bloom Raisin ~ライチの花咲くデニッシュ~
香り、味わい、そして驚き。五感で楽しむデニッシュ体験!
ライチの香りをまとわせたレーズンと濃厚なレーズンペースト。そこに華やかに香り立つライチクリームを重ね、レーズンのジューシーさと甘酸っぱさを最大限に引き出しました。
ザクッとしたデニッシュの生地が奏でる心地よい食感と、みずみずしく広がるライチの香りが口いっぱいに広がり、まるで花が咲くような味覚のブーケを演出します。見た目もまるで一輪の花のように美しく、香り、味、食感が織りなす、五感をくすぐる華やかな一品です。
ちぎって分けられる仕様なので家族や友人とシェアして楽しめるのも魅力。大切な人とのひとときを、香りと驚きに満ちたデニッシュを彩ってください。

松木 崇至 氏(株式会社ジェイアール西日本ホテル開発)
作品名:シャルマン・ルージュ・レザン
テーマ「魅惑のぶどう」 ~大人のご褒美~
厳選した赤ワイン、甘みのある芳醇なブランデーと料理に使われるイタリアの伝統的な調味料でカタクチイワシを塩漬けにし熟成させたアンチョビオイル(コラトゥーラ)をレーズンと煮込むことで甘みが増し、濃厚なうま味とマイルドな風味がプラスされます。
5日かけて作るうま味ある生地に、ラズベリーピューレ、ストロベリー濃縮果汁、ビーツの酸味が加わり、コラトゥーラレーズンとソルトレーズンの「味の対比効果」が甘さを引き出し、チョコとの相性が抜群に良いです。デザインの模様は広大なレーズン畑をイラスト風に表現し、魅力的かつ上品な大人への魅惑の赤葡萄をテーマに考えました。
五感で楽しみ、吸水率106%としっとりした生地に、うま味・甘味・酸味・塩味のバランスがレーズンを最大限に引き立てています。
最高のレーズンパンを作ることができましたので、是非よろしくお願い致します。

山本 隆正 氏(株式会社神戸屋)
作品名:Raisin a la vanille
日この作品の最大の魅力は、モンレニオンヴァニラの甘く華やかな香りを纏わせたレーズンを澄ましバターで漬け込むことによって、深みのある豊かな風味を引き出す点です。
澄ましバターがレーズンにしっかりと染み込むことで、その甘さが一層引き立ち、まろやかでリッチな味わいが口に広がります。さらに、モンレニオンヴァニラの香りと、ユズミンチの爽やかな酸味が絶妙に調和し、甘さと酸味でバランスを取ることで、全体的に深みのある味わいに仕上がっています。また、アクセントとして加えたくるみの香ばしさとブラックペッパーのほんのりとしたスパイシーさが、味の奥行きを広げ、食感にも変化をもたらしています。この絶妙なバランスによって、一口ごとに新しい発見があり、飽きが来ません。さらに、生地には4種類の粉と竹炭を使用し、見た目にも美しい深い黒色を与えるとともに、奥行きのある味わい、香りを漂わせ、全体の味わいを引き締める役割を果たしています。味だけでなく視覚的にも印象的な作品になっています。
全体的にこの作品は、素材同士の相乗効果によって、複雑でありながらも調和のとれた味わいを楽しめる仕上がりです。口に入れるたびにさまざまな風味が広がり、最後まで飽きずに味わい続けることができる作品になりました。

【製パン関連企業部門】
◆ 優秀賞
早川 知恵 氏(東京製菓学校)
作品名:ジンジャー香る黒みつレーズン
レーズンの持つ健康効果をより引き立たせたいと考え、ジンジャーシロップを活用しました。レーズンと生姜、どちらとも相性の良い黒糖をベースに使用することで、全体の味のバランスを取りつつ、レーズンをジューシーに仕上げています。また、本来のジンジャーシロップでは煮出した後で取り除いてしまう生姜をあらかじめ刻んで使用することで、そのままパンに練り込むことができ、シロップも切らずに使用するので材料のロスが出ないという工夫をしました。
生地には湯種を使用し、吸水を増やしたことでもちもちとした食感を出し、黒糖の優しい甘みと合う小麦の甘みを引き出しています。
そのままスライスして食べるのも美味しいですが、軽くトーストすると生姜の香りがより立ち、表面はサクッと、中はモチッとした2つの食感を楽しむことができてオススメです。
ジューシーなレーズンともちもちの食感で、女性だけでなく、子どもでも食べやすいパンとなっています。
