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- 第28回 ベーカリー新製品開発コンテスト
■2022年06月20日■
「第30回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」
2部門の大賞はフジパン(株)の髙藤いりえ氏と
(株)ポンパドウルの井手優佑氏に決定!
カリフォルニア・レーズン協会は、2022年6月10日(金)、11日(土)の両日、「第30回 カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」の最終審査を日本パン技術研究所(東京都江戸川区)で実施し、大賞2名を含む合計11名の入賞者を決定、表彰しました。
本コンテストは、カリフォルニア・レーズンを使った新製品の開発とその商品化を目的に実施、30回目の今年は、「量販/インダストリーベイク/ベイクオフ製品部門」(工場生産し、完全包装で販売する作品とベイクオフ・QBD製法で生産し販売するパン)と、「オールスクラッチ製品部門」(店舗や工場でのオールスクラッチ製法で生産し販売するパン)の計2部門で作品を募集した結果、日本全国から計117作品の応募があり、第一次書類審査で選出された21名のファイナリストが最終審査に臨みました。
ファイナリストたちは2日間に渡る計7時間以内に作品を製作し、作品の製作意図や特長などについてのプレゼンテーションを行いました。その後、質疑応答と試食審査が行われました。審査は製パン技術関係者6名のほか、カリフォルニア・レーズン協会駐日代表のジェフリー・マクニールが審査員長を務めました。
審査の結果、カリフォルニア・レーズン大賞は、量販/インダストリーベイク/ベイクオフ製品部門ではフジパン㈱ 髙藤いりえ氏の『ミルキーレーズンにひとくち惚れ』が、オールスクラッチ製品部門では㈱ポンパドウル 井手優佑氏の『Raisin feuille』(レザン フィーユ)が受賞しました。また、『京抹茶のツヤヤかレーズン』でカリフォルニア・レーズン特別賞を受賞した㈱志津屋 小林健吾氏は、当コンテスト史上初、三度目の受賞を果たしました。全11名の受賞者には、楯と、副賞としてカリフォルニア・レーズンの故郷「カリフォルニア州フレズノへの研修旅行」が贈られました。(研修旅行の実施時期は2023年秋予定)
今回の受賞作品は、これから続々と発売開始される予定です。カリフォルニア・レーズン協会は、今後もカリフォルニア・レーズンの使い方や新製品開発のアイデアを提供してまいります。
入賞者全員と審査員
● カリフォルニア・レーズン協会 駐日代表 ジェフリー・マクニールの挨拶 要約
カリフォルニア・レーズン協会を代表し、本日、「カリフォルニア・レーズン ベーカリー新製品開発コンテスト」へ21名の優秀なファイナリストの皆様をお迎えすることができ、大変嬉しく思っております。また、審査員の皆様には、貴重な専門知識を応募作品への評価に活かしてくださり、厚く御礼申し上げます。
本年は、カリフォルニア・レーズンのコンテストを開始してから30年目の節目となります。この間、5000件を超えるレシピの応募がありました。当コンテストの受賞者の中には、クープ・デュ・モンドやイバカップといった、世界的に一流のベーカリーコンテストに日本代表として参加されている方もおり、大変嬉しく思います。本日この場にいらっしゃる方々も、今後そういったチャンスを得られることを願っております。
新型コロナウイルスの影響により、今年もまた困難な一年となりました。今回のコンテストを実現するために、最終審査中も感染予防対策のガイドラインを遵守し、また遠方からお越しいただいた方々には参加をご決断いただいたことに、協会として深く感謝申し上げます。
今年の最終選考に残った作品は、実に優れたものばかりで、日本全国から参加されたファイナリストの皆様の独創性と高い技術が反映されていると感じました。審査員の一人として、ファイナリストの皆様にはご自身の才能をぜひ誇りに思っていただきたいと、心より申し上げます。
優れた技術と素晴らしい作品を披露したファイナリストの皆様に、重ねてお祝いを申し上げます。全ての作品を試食審査することができ、光栄に存じます。皆様が、今後ますます技術を磨かれていきますことを期待しております
● 伊藤 快幸 氏による最終審査総評 要約
例年、このコンテストではハイレベルな作品がたくさんあり、今年も色々な作品を試食しましたが、どれも非常に完成度が高く、結果も本当に僅差の内容だったと思います。「量販/インダストリーベイク/ベイクオフ製品部門」の方は、この製品をこの価格で出せるのかということを審査員の方々が口々に仰っており、コストパフォーマンスが高いうえに美味しい、という作品が多く見受けられました。また、「オールスクラッチ製品部門」の方は、今年は食事パン的なものが多く見受けられましたが、様々な素材の特長を活かしつつ、カリフォルニア・レーズンの特長がしっかり出ている製品が多々あったように思います。
私がこのコンテストに携わるようになって、今年で三年目となりますが、応募書類を見ていて思うのは、応募資格の中に「商品化、および商品提案して販売することが大前提のため、第三者が再現できるものとする」という項目がありますので、詳細に書かれているレシピであっても、型を使う場合はその型のサイズや、材料で種を使う場合は市販なのか自家製なのかといったところも、もう少ししっかりと見直してほしいということです。
また、苦労して生み出された製品がほんの数ヶ月で終売してしまわないように、末永く多くの方々に愛されるような製品に育てていっていただけたらというのが、私たちの思いでもあります。また、今回、惜しくも受賞を逃されました方も、次回もぜひチャレンジしていただけたらと思います。
入賞作品
(※所属企業・団体名の敬称略)
【量販/インダストリーベイク/ベイクオフ製品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
髙藤 いりえ 氏(フジパン株式会社)
作品名:ミルキーレーズンにひとくち惚れ
レーズンと相性の良いカスタードを組み合わせ、まろやかな甘味のレーズンを合わせることで、ひとくち食べたらもっと食べたいと思えるような仕立てにしました。
レーズンは、牛乳とバニラリキュールに漬け込むことで、まろやかで優しい甘味を引き出しました。ラム漬けレーズンミンチ、ペーストを加えることで、レーズンの風味を底上げし、全体でレーズンが味わえます。ケーキ生地は、ほろっと口溶け良い食感にし、レーズンのジューシーな食感をしっかり感じられるようにしました。
商品の仕立ては、スイーツ大国であるフランスの洋菓子の要素を盛り込んだ、スイーツのようなパンです。ブリオッシュ生地やクリームはトロペジェンヌをイメージし、発酵バター入りマーガリンやパネトーネ種を配合、口溶けの良いクリームを合わせました。また、ダクワーズをイメージし、ローストアーモンドを効かせたマカロン生地をトッピングしています。あなたもミルキーレーズンにひとくち惚れしてみませんか?
【受賞者のコメント】
カリフォルニア・レーズンの甘みやおいしさをどう引き出すかという点にこだわりました。
レーズンと相性の良い材料の中で一番好きなものがカスタードなので、カスタードとレーズンを合わせたときに、どうしたらレーズンが一番おいしく食べられるかを考えました。素材や味わいを数パターン試し、もっとも良かったものを作品にしました。
◆ カリフォルニア・レーズン金賞
藤井 恵 氏(フジパン株式会社)
作品名:レーズンとチーズのキャラメリゼ ~オレンジの香りとともに~
レーズンはオレンジジュースに漬けることで、レーズンの甘さを引き出し、オレンジの甘酸っぱさを付加しています。相性の良いクリームチーズと合わせたデニッシュです。表面には、キラキラと輝くように飴を敷き、仕上げました。
◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
山本 咲耶 氏(山崎製パン株式会社)
美味しくてサステナブルなケーキを3つのR(Reduction 削減)で!!
1. レーズンのロス削減(Reduction) … 規格外レーズンを使用したレーズンペーストを活用
2. 商品のロス削減(Reduction) … 長鮮度・ロングライフ商品(安全・おいしさを長く保持)にすることで店舗での廃棄削減 ⇒ 生地の水分活性を下げるレーズンペーストを使用
3. 環境への負荷削減(Reduction) … 乳製品・卵などの動物性原料不使用 ⇒ レーズンなどの植物性原料のみ使用
二階堂 桃花 氏(敷島製パン株式会社)
アップルビネガーを使うことで、レーズンの甘味と酸味を引き出し、丸みのあるフルーティーな香りを付与しました。市場ではお酒と漬けることが多いレーズンですが、お酒が苦手な方でも手に取っていただけるように考えました。アクセントのくるみも一緒に漬けました。コクや香ばしさもプラスする為に、レーズンペーストや全粒粉を使ったクランブルをトッピングし、チーズクリームフィリングとグレーズで全体の味をまとめました。
作品名は、ビネガーやチーズによる酸味とのペアリング効果と、それによって引き立ったレーズンの恋のような甘酸っぱさを、「組み合わせ・結婚」を意味する“マリアージュ”という言葉で掛けました。
【オールスクラッチ製品部門】
◆ カリフォルニア・レーズン大賞
井手 優佑 氏(株式会社ポンパドウル)
作品名:Raisin feuille
「Raisin feuille」は「レーズンの葉」という意味です。カリフォルニア・レーズンのジューシーさと甘みを活かすために合わせた食材が宇治抹茶とイチゴです。レーズンは前日に抹茶リキュールに漬け込み抹茶の香りを添加し、イチゴの酸味を加えることで、よりレーズンの甘みを引き出しました。
また、焼成前に葉脈に見立てたカットから見える、宇治抹茶の緑がパンに彩りを添えます。見た目も可愛らしく手に取りやすいサイズ感になっています。ぜひお楽しみください。
【受賞者のコメント】
美容室での散髪時に自分の髪型を見て、ぶどうの葉や葉脈の形が思い浮かび、どうやったら形作れるかを考えて、今回の形状にたどり着きました。
作品のポイントとしては、もしコンテストで受賞し全国発売することになった場合、若手からベテランまで、誰が作っても全て同じ品質で大量生産できるという点を重視したところです。
◆ カリフォルニア・レーズン金賞
中野 明人 氏(株式会社ドンク)
和をイメージする食材とカリフォルニア・レーズンを合わせた作品です。
こだわりのポイントは、レーズンを日本酒で炊き込み、よりジューシーで純米酒の旨味を含ませたことと、湯種にした玄米粉を生地に加えることで、クラムのくちどけを良くし、レーズンの食感がより際立つようにしました。また、ひと口目から楽しめるように、日本酒を使用したアパレイユを塗り焼き上げることで、香ばしい食感に仕上げました。
この作品は、より多くの店舗で販売、展開ができるよう弊社の主軸であるフランスパン生地をベースに考案し、たくさんのお客様に食べて頂きたいという思いを込めて作りました。
池田 匡 氏(ブーランジュリー グルマン)
日々の食事パンとして長く愛されるような、レーズンを全面に余すことなく使用したパンを作成しました。
レーズンのみずみずしい果肉をしっかりと感じられるように、実を潰すことなく全体に練り込み、一体感を出すことができるパン・ド・セーグルを使用しています。
また、レーズンのフルーティーさを引き立てるために練り込まれたカシスピューレが、視覚的に印象に残る断面に仕上げてくれます。
油脂、砂糖を使用しておらず、食物繊維、ミネラルも豊富な健康パンとしても魅力的なパンです。
◆ カリフォルニア・レーズン特別賞
吉田 賢治 氏(株式会社ポンパドウル アソシエ)
作品名:エキゾチック・レザン
レーズンにトロピカルフルーツの風味を合わせた、少しエキゾチックな雰囲気が感じられるデニッシュです。レーズンをパッションフルーツピューレとオレンジリキュールに漬け込み、爽やかさと酸味を加えてレーズンの甘みを際立たせました。
折り込みブリオッシュ生地は、練り込み油脂の代わりにレーズンペーストを練り込むことでサックリとした食感にしっとりさも加わり、風味も見た目も、よりレーズンを感じられるように仕上げました。フィリング生地が層になる様に重ねることで、最初は濃厚なガナッシュの風味、次に生地の食感、レーズンと来て口の中に一体となって広がり、最後にレーズンの瑞々しい食感と風味がしっかり余韻として残ります。
田熊 大幹 氏(株式会社神戸屋)
作品名:Trio de raisins
カリフォルニア・レーズンのはっきりとした甘味と瑞々しさを表現するために、香りの良い胡麻・柚子と合わせました。加水をしたレーズン生地を皮生地で包むことによって、もちもちとしたクラムとクラストの食感の違いも楽しむことが出来ます。コーヒーを淹れて朝食に、夜はチーズをのせてワインと一緒に楽しんでいただけます。様々な世代にあらゆるシーンで楽しんでもらえるようなパンをイメージしました。レーズンの甘味をと合わせる2種類の素材の香りを楽しんでもらいたく、三重奏を意味する“trio”から“Trio de raisins”と名付けました。
田澤 友希子 氏(いまいパン)
作品名:泡盛珈琲 Raisins
カリフォルニア・レーズンに沖縄の地酒泡盛と珈琲を融合させた高加水のハードパンです。 泡盛に3日以上漬け込み、芳醇な甘みが染み込んだジューシーなレーズンを珈琲の生地にたっぷり練り込みました。珈琲生地は、水出しアイスコーヒー、細挽きした珈琲の粉とインスタントコーヒーの粉を使い、苦味やコク、香りのバランスの調整をしました。ほろ苦い珈琲生地がレーズンの味わいを引き立ててくれます。沖縄では泡盛を珈琲で割る泡盛珈琲という飲み方があり、泡盛と珈琲の組み合わせも相性が良いです。生地は吸水100%の高加水で、クラムとレーズンがみずみずしく、翌日でも美味しくお召し上がり頂けます。珈琲や紅茶にはもちろん、ワインや泡盛などのお酒とも合う、ちょっと大人のパンをイメージして作りました。薄くスライスして食べて頂くのがオススメです。
小林 健吾 氏(株式会社志津屋)
作品名:京抹茶のツヤヤかレーズン
カリフォルニア・レーズンのおいしさを京都の素材と共に味わっていただきたいと思い考えました。 水分をたっぷり吸い込んだレーズンは、ツヤやかで想像以上にジューシーで高加水生地のもっちり食感、京抹茶の苦味、ホワイトチョコレートの甘み、レーズンの酸味と、いろいろな味や香りを楽しんでいただけます。長く愛される商品に育てて参ります。